2012年6月30日土曜日

癒しのワイン「マルサネ・レゼシェゾ」

今宵は非常に機嫌が良い。

期待したものがその通りに応えてくれたからか。
いや、それ以上のパフォーマンスを見せてくれたからだろう。
やってくれるではないか、フィリップ・シャルロパン。

やはり期待通りだ。

君は私を決して裏切らない。
かれこれ長い付き合いになるが、やはり最も信頼のおける人物の一人である。

最近はブルゴーニュワインが高い。
ヴィンテージに限らず、「それなり」を求めると、値段はそれなりでは済まない。
だが、私はふとブルゴーニュが飲みたい衝動にかられる。
それは何も最高級を味わいたいわけではない。ほっと一息つきたい。
ブルゴーニュに癒しを求めているのだ。


『マルサネ・レゼシェゾ』。
シャルロパンの造るこの地味な村名ワインこそが、
私の癒しとなりその期待に応えてくれる身近な存在だ。

新しいヴィンテージがリリースされる度に、ニヤニヤしながらグラスに注ぐ。
「わかっているよ。今年も美味しいのだろ?そうだろう?」
と高揚する気持ちを抑えながら。

今宵は、待ちに待った2009年。
そう、所謂グレートヴィンテージだ。
それも「神に祝福されたヴィンテージ」と称されると聞くではないか。

ピノ・ノワールにしては色が濃い。
透明感のある赤紫色だ。
ふむ、香りも悪くない。
色ほど印象的ではないが、木イチゴを思わせる
赤系果実のほのかなアロマ。

そして、口に含む。
色から想像した果実味とは一味違う。
ピュアなブドウのエキスを感じる、優しい味わいだ。

これもきっと彼の信条「自然なワイン造り」の賜物だろう。
除草剤、化学肥料、殺虫剤を使わないブドウ栽培。
厳しい自然を生き抜いたブドウだからこそ出せる優しい味わい。

最初は、こちらの様子を伺うような控え目な感じだが、
1時間も経たないうちにどんどん期待に応えてくれる。

はじめは目立っていた酸味が、果実味と見事に融合。
まろやかな口当たり。口中からじわじわとブドウの旨味が染み出てくる。
これぞ、体中がゆっくりと癒される至福のひと時だ。


「よしよし、これだこれ!これを待っていたんだよフィリップ。
焦らしてくれるじゃないか。」


 シャルロパンを愛弟子にした、かの有名なアンリ・ジャイエもきっとそう思ったに違いない。


「あぁ、シャルロパンよ。今宵も君に癒された。心より感謝する。」


 

▼今回紹介したワイン▼
2009 マルサネ・レゼシェゾ/シャルロパン・パリゾ 5,250円
                                                                                             

2012年6月23日土曜日

喜びを感じ、楽しみを見つける 「ブラネール・デュクリュ」

とある週末の午後、シャトーイベントが開かれるとうワインショップへ足を運んだ。
フランスからオーナー夫妻が来日するという贅沢さに、心躍らずにはいられない。

穏やかで丸く上品。
親しみ易く温かい。
優しさの中に感じる芯の強さ。
















ワインではなく、オーナーの印象だ。
シャトー・ブラネール・デュクリュのオーナー、パトリック・マロトー氏。
スイッチが入ったのか、とにかく語る。
熱血というよりは、胸に秘めた思いを丁寧に伝える印象だ。
威張っているわけではない。

だが確実に誇りを持っている。
オーナーの話はさておき、肝心なのはワインだ。

ブラネール・デュクリュ2007年、2008年をテイスティング。

正直、お世辞にも2008年は今すぐ開けて楽しもう!という気にはなれない。
口に含んだ瞬間、猛烈な自己主張を始める。香りはまだまだ閉じているのに、
それ以外の要素が『我先に!』と言わんばかりに押し寄せてくる。

なるほど、これはなかなか気が強い。
暴れん坊な印象だ。だが、ここでオーナーの話を思い出した。

2008年は20年先まで長く楽しめる。』

時を経て丸みを帯びて穏やかになることはよくあるではないか。

身近にいる誰かさんの様に。

それを思えば、この2008年も可愛く思えてくる。
これからどんな大人に成長してくれるのか、とても楽しみだ。

それに比べて2007年はなんとも素直で上品。
新鮮な果実とミネラルの複雑な香り、そして甘美なスパイスのニュアンス。
果実そのもののあるべき姿で、フレッシュな飲み易さ。
これがオーナーの語る『純粋な喜びを感じさせてくれるワイン』なのだろう。

なるほど、これには納得。
気の強い2008年はまだまだ落ち着くのを待つ必要がある。
しかし、既にピュアな気持ちを忘れずに上品に振る舞うことができる2007年は、
もう明日にでも一緒に食卓を囲みたくなる。
そうした色気が2007年にはある。

どちらもグレートヴィンテージでなくとも、充分に個性があり面白い。

 今宵のディナーは2007年をお誘いするとして、2008年には大人しく待っていてもらおう。
『お利口にしているんだよ』とセラーに念を送りながら。



2007年に出会えた喜びと、2008年を待つ楽しみ。
 


そう言えば、オーナーのポリシーは
『喜びを感じること、楽しさを見つけること』ではなかったか。
気が付けば、まんまとオーナーの魂胆にはまってしまった。


思わず笑みがこぼれる。
さすがだ。


▼今回ご紹介したワイン▼
2007 シャトー・ブラネール・デュクリュ 7,560円
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/detail.php?shohincode=0100304913A7&banner_id=wn
2008 シャトー・ブラネール・デュクリュ 6,930円
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/detail.php?shohincode=0100304913A8&banner_id=wn

2012年6月16日土曜日

限界に挑戦したワイン「アウターリミッツ」


本日から、エノテカ・オンラインのワインノートがスタートします。

エノテカスタッフが実際に飲んだワインについてじっくりと語ります。
初回のワインはモンテス社の新商品
“アウターリミッツ ソーヴィニヨン・ブラン”




















≪限界に挑戦した≫

という凄い触れこみで入荷してきたワイン。
まず、そのボトルに驚く。

モンテスのシンボルマークと言えば「天使」が真っ先に思いつくもの。
しかし、このワインにはその天使がどこにもいない。
しかも荒涼な地をイメージしたのであろうラベルには、
疲れ果てたのか、肩を落として佇む男性の後ろ姿が一人。

これがモンテスの表現する≪限界の地≫なのだろうか。


モンテス社が新たに目を付けた土地、
アコンカグア・ヴァレーのサパジャールの土地は、海岸線からわずか7kmしか離れていない場所。
荒野のような土地で育てられたブドウを使ってこのアウターリミッツのワインは造られている。
灌漑施設はあるものの通常3月には水分が干上がってしまうような厳しいテロワール。
ブドウのみならず、その他の植物さえ、まともに育つか分からないような
極限の土地でブドウが栽培されているという訳だ。

なるほど、これでラベルの男性の姿には納得した。


では、その≪限界≫を味わってみよう。

開けたてをグラスに注いだ瞬間広がる青々とした香り。
口に含むと、ソーヴィニヨン・ブランらしい爽やかで
キレのあるシャープな酸を感じられる。
一方で、厚みのある果実味が余韻に残る。
アフターは最終的に“グラマーなソーヴィニヨン・ブラン”という
イメージへと次々に変化していく。

この変幻自在のワインはなんなのだろうか。
ソーヴィニヨン・ブランとは、
このように難解なワインだっただろうかと考えを巡らしてしまう。


この謎めいたワインを深く理解したい。
もう一口、飲んでみる。

次に現れる表情はフレッシュな柑橘系のニュアンス。
一方でマンゴーやパイナップルなどの少しオイリーな
トロピカルフルーツのような香りが顔を出してくる。

そうかと思うと、どこか潮風を思わせるようなミネラルを感じる芳香に変化する。
まるでこちらを翻弄するかのような、小悪魔的な魅力にぐんぐんと引き込まれてしまう。


このソーヴィニヨン・ブラン、正直かなり変わり種ではある。
これが、極限の大地で生き抜いたブドウの生命力の成せる技ということなのだろうか。

比類なきほどの複雑さは、他の何とも比べることはできない。
まさに、限界の地に挑戦したことでしか得られないような、唯一無二のテイスト。
その孤高の味は、最後の一滴まで我々にさまざまなことをたたみ掛けてくる。
そして、飲み手は確実にそれに魅了されるに違いない。


貴重な1本に出会えた。



▼今回ご紹介したワイン▼
・アウターリミッツ・ソーヴィニヨン・ブラン/モンテスS.A. 3,150円
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/detail.php?shohincode=0668106723B1
・アウターリミッツ
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/list.php?special=MO