2013年9月30日月曜日

巧みな樽使い。ブレないワイン造りが生み出す秀逸なブルゴーニュ・ブラン。

かつて隠れた逸品として、ルーロのブルゴーニュ・ブランについて語ったのを覚えているだろうか。人には教えたくない、自分だけのとっておきの1本。

その美味しさを声を大にして言いたくなる半面、自分だけが知っている優越感に浸ることのできる特別な1本だ。

そんな心の奥で密かに楽しみに待っていたワインが、また一つ入荷した。

そのワインこそが、エティエンヌ・ソゼのブルゴーニュ・ブランだ。






















エティエンヌ・ソゼと聞けば、その名を知らない人はそう多くないであろう。
かの有名なブルゴーニュの造り手ルフレーヴと双璧をなす、ピュリニー・モンラッシェの名手として知られている。

モンラッシェをはじめ、シュヴァリエ・モンラッシェ、バタール・モンラッシェ、ビアンヴィニュ・バタール・モンラッシェの4つのグラン・クリュ、さらにはピュリニー・モンラッシェの9つのプルミエ・クリュ、そしてその村名ワイン、ACブルゴーニュを含む全16銘柄を生産している。




















150年前からブドウ栽培と菜園業を営んでいた歴史ある旧家であり、今やピュリニー・モンラッシェの名手としてその名を世界に馳せるエティエンヌ・ソゼであるが、その歴史は決して順風満帆ではなかった。

年々順調に畑を拡大し、戦後には12ha余りを所有するようになったエティエンヌ・ソゼであったが、1991年の相続問題に伴い、ドメーヌの所有するブドウ畑の大きさは3分の1に減少。減少した生産量をまかなうためには、信頼できるブドウ農家からブドウを買い付ける必要があり、そのため、「ドメーヌ」のとしての看板を下ろさざるを得なくなってしまったのだ。



ブドウを買い付けているとはいえ、その管理は徹底している。
ほとんどを果実の状態で購入し、自らのドメーヌ内で醸造から出荷まで全て目の届く範囲で行い、本当に満足できる質の高いブドウだけを使うことにこだわり、ドメーヌ時代と変わらない硬派なワイン造りを行っている。

そんなエティエンヌ・ソゼの努力の甲斐があり、我々は今も尚、昔変わらぬソゼの味わいを楽しむことができる。

ソゼのワインの特徴は、なんと言ってその巧みな新樽使いにある。新樽の使用率は、グラン・クリュ50%、プルミエ・クリュ33%、その他は25%以内と明確に新樽を使い分けている。












 
そして、驚くべきことに、ソゼのワインはブルゴーニュ・ブランにおいても、新樽が使われているのだ。ブルゴーニュの多くのドメーヌが、A.C.ブルゴーニュクラスのワインをステンレスタンクのみで造ることが多い中、エティエンヌ・ソゼのブルゴーニュ・ブランのブドウは、3分の1はステンレスタンク、3分の2は木樽を使用して仕込まれる。そのうち新樽率は10%である。

エティエンヌ・ソゼは、ブルゴーニュ・ブランにまでも、これほどの手間をかけて造っているのだ。グラン・クリュからA.C.ブルゴーニュまで、ソゼ独特のスタイルを一貫しているから素晴らしい。


グラスに注ぐと、リンゴや白い花を思わせるフレッシュなアロアが可憐に広がる。
口に含むと、甘い蜜の香りと共に、しなやかな酸が心地よく喉を流れる。
主張しすぎない上品なミネラルと、ほのかに香る甘い樽の香り。
透明感溢れる美しい佇まいに、まるでピュリニー・モンラッシェを飲んでいるかのような、そんな錯覚さえ覚える。

もはや、このワインがピュリニー・モンラッシェかブルゴーニュ・ブランであるかは、私には、さほど問題ではないのである。エティエンヌ・ソゼが逆境に合いながらも、守り抜いたこだわりのワイン造り、その賜物こそがこのワインなのだ。


『心から美味しいと思えるワイン』


同じワインを愛する同胞として、
是非一度、このワインを手にとって頂きたいと切に願う。



▼今回ご紹介したワインはこちら▼
2011年ブルゴーニュ・ブラン / エティエンヌ・ソゼ 3,990


2013年9月27日金曜日

『人生をかけて守り抜いたブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノと言えば、イタリアワインの格付けで最も規定の厳しいD.O.C.G.に認定されているワインであり、世界のワインラヴァーたちからの熱い視線を集める、偉大な赤ワインとして知られている。

「ブルネッロ」とはブドウの品種名であり、「モンタルチーノ」とは、イタリアのトスカーナ州シエナ県にある小さな村の名前である。人口数千人足らずのこの小さな村で造られるワインが、今や世界から一目置かれるワインとなっているのである。


この村で造られるワインが、一躍有名になったのには、ある男の存在が欠かせない。ブルネッロ・デイ・モンタルチーノを開発した、名門中の名門ワイナリー、ビオンディ・サンティの5代目当主であり、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを世界に知らしめた、立役者である。
その名をフランコ・ビオンディ・サンティという。


フランコ氏は、1922年ビオンディ・サンティ家に生まれた。創始者クレメンティ・サンティ氏は、トスカーナの主要品種であるサンジョヴェーゼを改良し、「サンジョヴェーゼ・グロッソ=ブルネッロ」を開発。そして、一家3代目のフェルッチョ・ビオンディ・サンティ氏が、そのワインを始めて元詰しリリースした。まさにビオンディ・サンティ家は、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生みの親なのである。

フランコ氏は、そんな祖父の開発したブルネッロ・ディ・モンタルチーノを人生をかけて守り抜いた。例えば、長きに渡り多くのイタリア生産者たちが熟成に利用した、225ℓのバリックの流行には全く乗らなかった。「我々はバリックを必要としない。我々の大地が既にワインを偉大なものにしているから。」と語り、祖父が購入した大樽を1880年代から使い続けた。

また、サンジョヴェーゼ・グロッソ100%という現規定を変えようとした流れにも断固として立ち向かい、一歩も引くことがなかったのである。


















フランコ氏の偉大さは、祖父のワイン造りを受け継ぎ守り抜いただけでなく、トスカーナにおけるブルネッロ・ディ・モンタルチーノの普及、また国際舞台においても、幅広いプロモーションを行い、現在の確固たる地位を築いたことである。
若きフランコ氏は、祖父のワインを販売するために、父と共にアメリカに渡り、そこで「欲しい人に探し求められるようなワインを造る」ことを決意した。


そんな偉大なフランコ氏であるが、残念ながら201347日、惜しまれつつも91歳という大往生でこの世を去った。90歳までワイナリーに立ち続けたフランコ氏。
彼が手掛けた最後のグレート・ヴィンテージが、このワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノアンナ―タ 2007年」である。




アンナ―タはビオンディ・サンティが造る最もスタンダードなブルネッロであり、所有する3つの畑の中で最も古い畑「イル・グレッポ」のブドウから造られている。

2007年ヴィンテージと言えば、2006年から続くトスカーナのグレート・ヴィンテージだ。

抜栓後、最低でも2時間は待った方が良いだろう。フランコ氏曰く、8時間はおいておくのがベストだという。もしくは、デキャンタすることを勧める。
時間を置いて、グラスに注ぐと、赤いチェリーのアロマが妖艶に広がる。そして、スパイス、タバコ、ユーカリの葉やバルサミコのニュアンスが次々に漂う。

口に含んだその時から、我々はこのブルネロ・ディ・モンタルチーノに詰まった歴史の深さ、そしてフランコ氏の想いを知ることとなるだろう。濃密で個性的な香りに包まれた、がっしりとした骨格のある重厚なボディ。そして、時間と共に土っぽさが抜けて、柔らかくエレガントに変化する上質なタンニン。酸がアクセントとなり全体を引き締め、バランスの良さ、そして高貴な印象を与える。

過去の歴史、これまでの功績、そして未来へ向けた可能性を感じるポテンシャルの高さ。まさに、人生をかけてブルネッロの栄光を築いた彼の集大成を感じさせる1本だ。

この世の中にブルネッロ・ディ・モンタルチーノという素晴らしいワインを知らしめてくれたことに、心からの敬意を込めて頂くこととしよう。



▼今回ご紹介したワインはこちら▼
2007年 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ アンナータ / ビオン・ディ・サンティ 19,950円
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/detail.php?shohincode=0445601613A7&banner_id=wn18