2013年12月30日月曜日

20年の時を経て、色褪せぬ輝きを放つ魅惑のシャトー、グリュオ・ラローズ。




何ごとも、若ければ若いほど良いとは限らない。

人間、特に我々日本人は「若さ」がある一種の特権のように
使われることがあるが、欧米では「年を重ねた美しさ」を重視する傾向にある。

「若い=未熟」であり、「年を重ねる=様々な経験により魅力を増す」と考えられている。

私は、この欧米の価値観に同調する。
このことを最も身近に感じることができるのは、やはりワインの存在であろう。

若さ(フレッシュさ)を売りにしたワインが多く存在することは事実であるが、
ワインそのものの本質に迫った時、最大の魅力は「年を重ねること」、
つまり「熟成」にあるのではないかと私は思う。

そして、この事実を証明するに相応しいワインが、ここに存在する。

その名も『シャトー・グリュオ・ラローズ 1993年』。






シャトー・レオヴィル・ラスカーズやシャトー・レオヴィル・ポワフェレなど、
人気の高い格付けシャトーがひしめくサン・ジュリアンの中でも、
ひと際輝きを放つシャトー、グリュオ・ラローズ。
















1級シャトーや、レオヴィル・ラスカーズのような華やかさはないものの、
サン・ジュリアンのテロワールを余すことなく表現しており、
どのヴィンテージも安定したクオリティを誇る、信頼のおけるシャトーとして、
長年ボルドーファンから愛されてきた。

ラベルに記されている、“LE VEN DES ROIS  LE ROI DES VIN” 「王のワイン、ワインの王」
という言葉は、1778 年に死去した初代オーナー、グリュオ氏の娘婿であり、シャトーを引き継いだジョセフ・セバスチャン・ド・ラ・ローズ氏が名付けたものである。
上流階級の社交界において、グリュオ・ラローズを人々に紹介するためのスローガンであったと言われている。

ラローズ氏の社交界での活躍もあり、グリュオ・ラローズは、
各国の宮廷や貴族たちの間で人気を集め、
1855年の格付け当時は、1級シャトーに次いで高い価格で取引されていた。

















グリュオ・ラローズの最大の魅力は、その力強さとフィネスのバランス、
そしてなんと言っても、長期熟成に耐えうる長命さである。

熟成を経るごとに、肉厚で濃厚な果実味はビロードのようなキメ細かさのある
なめらかな舌触りへと変化する。
硬質な酸は、緊張が解れたかのようにエレガントさを帯び、
豊かなタンニンは、甘みを帯びた穏やかな余韻へと導いてくれる。

“ワインの王”の名に値する貫禄を感じさせる、余裕のある熟成感。
まさに長い歳月をかけてこそ、その真価を発揮する、驚くべきシャトーである。

 














そして、1993年ヴィンテージ。
来年、20年の熟成を迎える記念すべきヴィンテージだ。

ローズマリー、タイムの香りに白コショウのスパイス。
燻したハーブ、オリーヴに土やトリュフの香り。
グラスに注いだその時から、20年の歳月が次から次へと姿を現す。

煮詰めたカシスやチェリーを思わせる赤系果実のアロマと、
角の取れたしなやかなタンニンが見事に調和する。
複雑に絡み合うアロマが、我々の想像力を掻き立てる。
この20年、どのように過ごしてきたのだろうか。
じっと静かに眠っていたのか、はたまた荒れた時もあったのであろうか。

そうこう想像力を働かせているうちに、
穏やかな果実味が、うっとりするような心地よい余韻へと導いてくれる。

20年の時を経てもなお、色褪せない美しさ。
むしろ20年の月日があったからこそ、今の輝きを放っているのかもしれない。

若いヴィンテージでは味わうことのできない、熟成ワインの醍醐味。

20年苦楽を共にした、愛すべき人と味わいたい、実に奥深い1本である。


▼今回ご紹介したワインはこちら
1993年 シャトー・グリュオ・ラローズ    15,750円
                             







2013年12月26日木曜日

愛され上手な三男「シャトー・ダルマイヤック」



幾度も名が変わりながらも人々に愛され続けているワイン。
そんなワインがあることをご存じだろうか。

その名も、「シャトー・ダルマイヤック」。

シャトー・ムートンを擁するバロン・フィリップ社が
ポイヤックに所有しているシャトーであり、
クレールミロンが次男、そしてこのダルマイヤックが三男と称されている。



人間で言うところの三男のキャラクターとは、一般的に溌剌として人懐っこく憎めない。
愛され上手でなぜか一番世渡り上手だったりもする。
そしてこの三男も、その愛され上手の気質を備えていることに、
我々は気付かされることになるのだ。




ダルマイヤックのシャトーは17世紀終わりごろ建てられたが、
当初はまだ高名なシャトー・ムートン・ロスチャイルドの傘下には入っていなかった。
当時格付け第2級だったシャトー・ムートンを格付け第1級に格上げさせた功労者でもある
フィリップ・ド・ロートシルト男爵がダルマイヤックの畑に魅力され、
1924年から畑のごく一部を手に入れ始め、1933年に全ての畑を買収した。

その当時ダルマイヤックはムートン・ダルマイヤックという名称だった。






その後時代の変遷とともにシャトー・ムートン・バロン・フィリップ、
そして現在のシャトー・ダルマイヤックと名を変えていく。
















現在、その名が記されたラベルに描かれている“バッカス(酒の神様)”の
オリジナル作品は、ムートン・ロスチャイルドのワイン美術館に所蔵されており、
ムートンがいかにこのワインを大切にしているかと伺い知ることができる。
まさに、時代を超えて愛されてきたワインなのだ。

 




















さて、そんな歴史に思いを馳せながら飲んでみるとしよう。


一口含むと、さっそく黒果実などの甘みのある香りに惹きつけられる
2008年とまだ若いヴィンテージながら、濃密な香りが立ちあがり、
周りの空気を一気に陽気に変えた。
口に含むと一気に広がる旨味。
溌剌とした果実感がありながらも滑らかで、なんとも親しみやすい味わい。
力強いブドウの凝縮感と程良い酸からは、長期熟成出来るポテンシャルを感じる。

ここまでくるとシャトー・ムートンが関与していようがしていまいが、
この魅力的で美味しい1本に出会えたことに意味がある…
そんな思いすら抱かせるワイン、シャトー・ダルマイヤック。

この溌剌とした三男も年数を重ねるごとに大人になっていくのだろう。
ふと親心のようなものが湧いてくる。


次会う時はどんな成長ぶりを見せてくれるのだろうか・・・

長い月日をかけてその変化を見守ろうではないか。


今回ご紹介したワインはこちら
2008
年 シャトー・ダルマイヤック    税込 6,300
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/detail.php?codehead=&shohincode=0100202013A8&bunner_id=wn23

2013年12月11日水曜日

長年愛され続ける、ボルドーの実力派シャトー「グロリア」。

体の芯まで冷えるような、寒いこの季節、
部屋に籠ってじっくり飲みたいのは、やはりボルドーの赤ワインである。

それも、じっくりと時を重ねて、じわじわと旨味を増した、
今まさに最高の状態にある、味わい深い赤ワイン。

グラスを傾け、時の経過に想いを馳せて、ワインとじっくり語り合おうではないか。

「シャトー・グロリア 2002年」

まさにこの季節にピッタリの1本だ。



「シャトー・グロリア」、ボルドーワインを嗜む者であれば、
一度はどこかで耳にしたことのある名前であろう。

そう、クリュ・ブルジョワでありながら、
格付けシャトー並みの高品質を誇る、実力派シャトー。

黒系果実の華やかなアロマに、スミレやミントのような清涼感溢れる香り。
主張しすぎない上品な果実味に、タンニンは柔らかくしなやかな味わい。
古き良きボルドーワインを感じさせる、クラシックなテイスト。

ヴィンテージの良し悪しに関係なく、安定した味わいで、
長年愛されてきた無くてはならない存在である。

シャトー・グロリアは、なぜ我々に安心感を与え、愛され続けるのか。
それには、このシャトーの秀逸なテロワールが関係している。
















長年、サン・ジュリアン村の村長を務め、今日のメドックにおいて、
「伝説の男」と称される、故アンリ・マルタン氏。
彼がサン・ジュリアンで数々の特級シャトーから土地を集め、
作り上げたのがこの「シャトー・グロリア」である。

1942年、僅か6ヘクタールの畑から始まったシャトー・グロリア。
格付けシャトーの所有畑がひしめき合うメドックにおいて、
新たなシャトーを作るなど至難の業であった。

しかし、アンリ・マルタン氏は、自身のこれまでの活躍を武器に、
名門シャトーから信頼を勝ち取り、畑を譲ってもらうことに成功したのである。
その名門シャトーの畑というのが、実に豪華な目を見張るものであった。

シャトー・レオヴィル・ラスカーズ、
シャトー・レオヴィル・ポワフェレ、
シャトー・レオヴィル・バルトン、
シャトー・デュクリュ・ボーカイユ、
シャトー・ラグランジュ、そして、シャトー・グリュオ・ラローズ。

これら錚々たる上級格付けシャトーから譲り受けた畑のブドウで、
シャトー・グロリアは造られているのだ。

シャトー・グロリアの人気を支えているのは、何もこの優良な畑に限ったことではない。
畑の数は、およそ50ヘクタール。
あらゆるエリアに点在する畑を統括するのは、並大抵のことではない。















それぞれの畑ごとに成熟度を正確に判断し、
収穫のタイミングを見計らう。
ベストな状態のブドウを収穫するために、決して手間を惜しまない。
この地道な努力があってこそ、秀逸なテロワールの良さが生かされるのである。


さて、シャトーの話はこれぐらいにして、
肝心のワインをじっくり味わおうではないか。





















11年の熟成を経て飲み頃を迎えた、シャトー・グロリア。
チェリーの甘いアロマに、ハーブの香り。
上質な熟成を感じさせる、スモーキーなニュアンスが鼻腔を刺激する。

時を経てもなおフレッシュさを帯びた果実味に、オークの香り。
タンニンはまろやかで、引き締まったボディ。
優しく寄り添うような、人懐っこいチャーミングな味わいだ。
若いヴィンテージではなかなか味わうことのできない、
角の取れたなめらかなテイスト。

これぞ長年愛され続ける、実力派シャトーの魅力。
まさにこの冬じっくり味わいたい、ほっとする1本である。

▼今回ご紹介したワインはこちら
2002年 シャトー・グロリア    税込 6,825円
http://www.enoteca.co.jp/online-shop2/detail.php?shohincode=0100305213A2&bunner_id=wn22