2014年6月15日日曜日

真のワイン好きの富豪が造る、手が届くグランヴァン

「大企業の最高責任者を務めながら、愛するワインの畑を買い、
自分が飲みたいワインを造る。」

そんな誰もが憧れる(もちろん私も)人生を地で行く男がいる。
それが、ブルゴーニュのドメーヌ・フランソワ・フュエのオーナー、
フランソワ・フュエ氏だ。















まず、彼の富豪ぶりが半端ではない。
キャンピングカーやテントなどアウトドア用品の
製造販売を行うTRIGANO社の最高責任者でもある彼は(もちろん現役である)
フランスの長者番付でトップ200にランクインしたこともあるという正真正銘の富豪。

そんな彼はブルゴーニュワインを愛するあまり、
1991年にニュイ・サン・ジョルジュにあるオー・トレイの畑を購入、
ワイン造りを始めたのである。

もちろん、富豪が造るワインなどいくらでもある。
ボルドーのシャトーを例にとっても、そのオーナーは、富豪だらけだ。
大手生命保険会社、洋酒メーカー、ファッションブランドのオーナー。
最近では中国の富豪がボルドーのシャトーを買収する話もよく聞く。

だた、ブルゴーニュの畑を買った富豪というのはあまり聞かない。
最近だと、ドメーヌ・デュージェニーを買収した、
ボルドーのシャトー・ラトゥールのオーナーでもあるフランソワ・ピノー氏くらいである。
なぜなら、ブルゴーニュの栽培面積はボルドーの約4分の1
ただでさえ少ない畑であり、誇り高きフランス人で、
代々相続してきた大切な畑を売る人間はそうそういない。

しかも、フランソワ氏が買った畑の一つ、ヴォーヌ・ロマネの区画は、
今は亡きワインの神様、アンリ・ジャイエのアドバイスに従って買ったという
超優良畑だというではないか。

なぜフランソワ氏は、そんなに入手困難な畑を購入することができたのか?
それに対する氏の答えは、単純明快。「ありとあらゆる手を使ったんだよ(ウインク!)

















もちろん膨大な財力を注ぎ込んだことは想像に難くない。
ただ、彼がブルゴーニュの人々を説得できたのは、
彼が真のブルゴーニュワイン愛好家であったということが大きい。
ワインを愛するブルゴーニュの人々は、同じくワインを愛するフランス人
であったからこそ、大事な畑を売ることができるのではないだろうか。

さて、話をワインに戻そう。
フランソワ・フュエ氏のもう一つ凄いところは、
あらゆる点においてこだわりぬいた素晴らしい品質のワインを、
妥当な、信じられないほどお買い得な価格で販売している点にある。

まず、ブドウの栽培、醸造を請け負っているのは、ダヴィド・デュバン氏。


















現在ではダヴィド・デュバン名義でもワインをリリースしており、
「ブルゴーニュの若手No.1」との呼び声高い造り手である。
フランソワ氏はいち早く彼の才能を見抜き、
1991年の創業当初からダヴィド氏にワイン造りを一任することにしたのだ。
弱冠20歳のほとんど無名の若者の才能を見抜き、
リスクを恐れずに投資するところが優れた経営者の彼らしい。

そして、経営者であるとともに真のワインラヴァーである彼は、
ワイン造りへのこだわりが並ではない。

ブドウ栽培はビオロジックを採用、化学物質を一切使用しないのはもちろん、
機械が入れない傾斜面に畑が多く、木を傷つけないようにするため、
馬を使って畑を耕している。

そしてグラン・クリュのブドウの収穫には「ペデュセル」という
非常に手間のかかる方法を採用している。
これはブドウの付け根の梗を数ミリ残して摘み取るという非常に手のかかる作業。
梗を少し残すことで、ブドウのジュースが流れ出ないようにし、
またブドウを傷つけることなく収穫できるという点にある。
これには通常の7倍の時間と数倍のコストがかかるという。

よりよいブドウを収穫するために、時間とコストを要する作業をいとわない、
この姿勢こそが、彼が真のワインラヴァーたる所以である。

さあ、そんなこだわりの詰まったワインを飲んでみることにしよう。
彼の拠点がある、モレ・サン・ドニのワイン、
「モレ・サン・ドニ・プルミエ・クリュ・クロ・ソルベ 2010年」である。

























グラスに注いだ瞬間から、大きな花束を思わせる華やかな香りが漂う。
そこにブラックチェリーの凝縮したアロマ。
グラスを回すと、ミントやリコリス、スパイスといった香りが顔を出す。
まだ少し硬い印象があるが、タンニンはシルキーで、
存分に旨味を感じることができる。

果実の凝縮感とミネラルが、素晴らしいバランスでまとまっており、
とにかくエキスの塊のような旨味に圧倒される。
これぞワインラヴァーが心の底から喜ぶ、
雑味がそぎ落とされた究極の美味しさといっても過言ではないだろう。

フランソワ氏のワイン造りの信念は
「本当にワインが好きな人、味がわかる人にだけに美味しいワインを届ける」
ことだと言う。
クロ・ソルベは1級畑、そしてこの完成度でありながら
価格は1万円を切るというリーズナブルさ。何とも嬉しいではないか。

聞けばフランソワ氏は、まだまだブルゴーニュに畑を買い足すという
野望をもっているらしい。

こんなに良心的な価格の、素晴らしく美味しいグラン・ヴァンを
世に出してくれる富豪はそういないだろう。

フランソワ氏の健闘を祈りつつ、残りのワインをじっくり頂くことにしよう。


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